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ライバル企業への転職禁止規定は有効か?

Q

ライバル企業への転職禁止規定は有効か?

私は、金属加工機械の制御装置を製作する会社に勤務していましたが、労働条件など劣悪なため、同じ制御装置を制作するB社に入社したいのですが、会社は、競合関係にある企業への転職は認めない。仮に、転職した場合は、退職金は減額するといわれました。

A

法的ポイント

一般論として、会社は、労働者に競争会社に転職してはいけないとの競業避止義務はありません。
では、労働者が、競合関係にある会社に就職しないとの誓約書を書くと、それは有効かどうか。これは、難しい問題なのです。
一般に雇用関係において、その就職に際して、あるいは在職中において、退職後における競業避止義務をも含むような約束が結ばれることはしばしば行われます。会社が、労働者に対し退職後にライバル会社に転職することを禁ずるいわゆる『競業禁止』は、経済的弱者である労働者から生計の道を奪い、その生活をおびやかすおそれがあると同時に、職業選択の自由を制限するおそれ等をともないます。
そこで、この『競業禁止』について合理的な事情がないときは、一応、営業の自由に対する干渉とみなされます。特にその約束が単に競争者の排除や抑制を目的とする場合には、公序良俗に反し無効となります。

労働者は、雇用期間中、様々な経験により、多くの知識・技能を修得することがありますが、これらが同一業種の営業において普遍的なものである場合、つまり、労働者が他社で働いた場合に同様に修得できる一般的知識・技能を獲得したに過ぎない場合には、それらは労働者の一種の財産であって、そのような知識・技能は雇用終了後、大いにこれを活用して差しつかえはない。とされており、これを禁ずることは、単純な競争の制限になり、労働者の職業選択の自由を不当に制限するもので、公序良俗に反します。

次に、競業避止義務を内容とする契約書を締結する場合は、使用者は合理的な内容にし、労働者の権利を不当に制限しないように配慮する必要があります。就業制限には限度があり特に、就職禁止期間をあまり長くすると契約は無効と判断される可能性があります。さらに、労働者に対し、競業避止義務の内容を十分説明する必要があります。説明が不十分なので、契約は無効とした判決もあります。
実例ですが、「競業避止義務に違反した場合は、退職金を半額にする」との規定は、地裁では労働基準法16

条に違反し無効と判断されましたものがあります。

判例
同業他社への転職者に対する退職金の支給額を一般の退職の場合の半額と定めた退職金規定は有効である。
原審確定の事実関係のもとにおいては、会社が営業担当社員に対し退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限し、右制限に反して同業他社に就職した退職社員に支給する退職金の額を一般の自己都合による退職の場合の半額と定めることは、労働基準法3条、16条、24条及び民法90条に違反しない。昭和52年8月9日最高裁判決(労働判例371-14)秘密保持義務と2年間は競業関係にある会社への就職を禁止した、会社と従業員間の契約を有効とした。昭和45年10月23日奈良地方裁判所判決(判例時報624号78頁)。

アドバイス

結論から述べれば,「競業避止契約」が有効かどうかは,労働者の「職業選択の自由」と企業の「不正競争からの保護」という2つの兼ね合いから,ケース・バイ・ケースで判断されます。
憲法では、職業選択の自由が保障されていますので、これを不当に制限する契約は「公序良俗違反」として民法により無効と判断されます。この観点から言えば,一般的に「競業避止契約」は無効です。
一方,企業も「不正競争」からは保護されなければならないので、企業から見れば,元の社員が競合企業に就職するのは,自社のノウハウを持っていかれるので,たまったものではないでしょう。

競合企業に就職した元社員が,自社の営業秘密を不正に漏洩しないとも限りません。そういったリスクがある場合に「競業避止契約」を結んでこれを防ぎたいのは当然だと思います。
では,どんな場合に競業避止契約が有効になるのか。日本でその基準になっているのがフォセコ事件の判例です。1970年の事件ですが,今も通用している重要な判例です。
フォセコ事件では,(1)元社員が元の勤務先で重要な営業秘密を職務上知り得る立場にあった,(2)機密保持契約を結び機密保持手当を支給されていた,(3)「競業避止契約」の対象職種や期間が明確になっていた――ことを総合的に判断して,裁判所は競業避止契約の合理性を認めましたが、逆に言えば,こうした条件を満たしていない場合は原則として「競業避止契約」は無効となりますので、是非参考にしてください。

【参考】
経済産業省の『競業避止義務契約の有効性について』では、競業避止義務契約が労働契約として適法に成立しているかどうかを、競業避止義務の有効性を判断する基準としています。ここからは、競業避止義務契約の判断基準となる6つのポイントを解説します。

  • 競業避止義務契約の有効性を判断する6つの判断基準
    1. 守るべき企業の利益があるか
    2. 従業員の地位
    3. 地域的な限定があるか
    4. 競業避止義務の存続期間
    5. 禁止される競業行為の範囲について必要な制限があるか
    6. 代償措置が講じられているか

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