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事故の損害額を一定割合求められる

Q

事故の損害額を一定割合求められる

従業員50名程度の運送会社でトラックのドライバー(正社員)として働いている。労働組合はない。
会社の規則に、事故を起こした場合にその損害額の一定割合を労働者が負担することになっている。
ドライバーの中には、事故を数回おこし、給料の多くを損害額として天引きされている者もおり、生活がままならない状況である。
そもそもこういった規則は法律に違反していないのか?

A

法的ポイント

  • 労働基準法第16条(賠償予定の禁止)
    条文「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」
  • 労働基準法関係通達(昭和22年9月13日基発17号)
    通達内容 「本条(労働基準法第16条)は、金額の定めを禁止するのであって、現実に生じた損害について賠償を請求することを禁止する趣旨ではないこと。」
  • 民法415号
    条文「債務者がその責務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行することができなくなったときも、同様とする。」

アドバイス

  1. 労働基準法第16条の趣旨は、労働者が会社に損害を与えた場合を想定して、予め・違約金や損害賠償額を定めてはならないとするもので、労働者が仕事上のミスで不良品を出したり高額な機械をこわしたりして会社に損害を与えた場合に、生じた損害の賠償請求までを禁じたものではありません。
  2. しかし、いくら会社に損害を与えたからと言って、どんな場合でも労働者は会社からの損害賠償請求に対して全て従わなければならないかと言えばそうではありません。一般的には、業務の過程で労働者が通常求められる注意義務を尽くしている場合には、損害賠償の基礎となる「過失」が無いとされ、損害賠償義務は生じないと言われています。また、些細な不注意(軽い過失)により損害が発生したとしても、そのような損害の発生が一定の確率で発生するような性質のものである場合にも、損害の発生はいわば業務の過程に内在するものとして賠償義務は生じないとの考え方が一般的です。
    但し、労働者に重大な過失や故意がある場合には、損害賠償義務は免れないでしょう。
  3. 労働者が会社から損害賠償請求された事件を扱った裁判例は数多くありますが、その大半が労働者の過失度合いを考慮して請求額に対して減額した判決となっています。
    【裁判例の一部】
    ・株式会社G社事件 東京地裁 平成15.12.12(請求額に対して2分の1)
    ・M運輸事件 福岡高裁那覇支部 平成13.12.6(すでに損害額の4分の1を弁済していたため、これ以上の損害賠償の支払いを求めたり、求償権の行使は許されないと判断)
    ・K興業事件 大阪高裁 平成13.4.11(会社が労働者に損害賠償請求しうる範囲は、信義則上、損害額の5%にあたるとされた。)
  4. 最近の景気動向を反映して、このケースのように仕事上で交通事故を起こした場合に、予め金額ではないものの、損害額に対して一定の割合(率)で賠償やペナルティーを決めて労働者に課している場合が見受けられます。
    先に述べたように、労働基準法第16条は「金額」で賠償を「予定」することを禁じている訳ですが、このケースのように金額ではないものの、率や「全額」とか「半額」などで賠償を予定している場合も、労基法第16条の趣旨に反すると言えるでしょう。
    労働基準監督署に実情を説明して是正指導を求めることも有効な手段となる場合もあります。
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