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事故の責任をとる契約書は有効か?

Q

事故の責任をとる契約書は有効か?

タクシーの運転手として働いている。
以前、社長との間で言い争いになり、目を付けられるようになった。
数日前に、「お前は態度が悪いから事故の際の念書を取る」と言いだし、『事故を起こした際に、一切の責任は個人が取り会社には迷惑を掛けない。』という文書に署名をするよう迫ってきた。
署名しなければ解雇も考えるといっている。どうすれば良いのか?

A

法的ポイント

質問タイトルの「事故の責任をとる契約書」は、発生していない事柄に対する損害賠償責任をあらかじめ約束することを求められたというものであるが、あえて法的根拠らしきものを探すと、民法420条「賠償額の予定」である。これは「債務不履行に備えてあらかじめ『損害賠償金額をこれだけにする』という取り決めをしておくことができる。決められた金額は裁判所も増減できない」というものであり、発生した時には○○○○と「念書」として提出を迫り雇用継続に言及すること自体、不法行為であり許されません。

事故が発生した後の解釈は、労働法制で定められたものはなく、裁判判決からの判断になります。 業務遂行で会社に損害を与えた時に、「始末書」「顛末書」「念書」「報告書」の提出を求められることがよくあります。使用者がこれらの文書の提出を求めること自体は違法ではありません。
会社が労働者に、問題が発生したことの「経過・原因・事情・対応などの報告」を求めることは当然であり、業務命令も有効となります。ただし、文書の呼び方はなんであれ、求めている内容に「反省・謝罪・弁済・懲戒処分の応諾」などが含まれる時は、憲法19条「良心の自由」を侵すことになることから、提出を拒否したことに対して、提出を強要したり、懲戒処分することは違法となります。
会社が「反省・謝罪」などを求めることができるのは、就業規則で譴責・懲戒処分として「反省・謝罪を内容とする始末書をとること」を明示している場合です。
就業規則に基づいた始末書提出命令を拒否した場合の懲戒処分を巡る裁判は、合否両方の判決が見られます。多くの判決は、個人の意思表明を強要できない(憲法19条「良心の自由」)ことから、拒否を理由とした処分は無効としています。
「始末書の提出命令」は、就業規則による懲戒処分の一種であり、一つの事件を二度処分できない「一事不再理」の原則の側面もあります。懲戒処分の適否も労働者が納得できない場合には、個別紛争として争うことができます。

アドバイス

以上のことからすると「念書」は、個人の意思の表明そのものですから、提出を拒否しても就業規則としても法的にも問われるものではありません。「署名しなければ、解雇」と迫ることは違法であり、解雇権の濫用となります。
また、相談の事例は発生してもいないことに対して、意思表明を求めていることから、労働者が安心安全に労働提供する権利を侵しているともいえます。
実際に事故を起こした時にどうなるか、考えて見ましょう。

  1. 就業規則に基づき、始末書の提出命令が出され、提出拒否した場合は、「業務命令拒否の事実」が残ることから、後日別な問題が発生した時には、次の処分に当たって処分暦として蓄積された判断により、重たい処分となる可能性があることを考慮する必要があります。実践的な対応としては、自分に過失があるときは、始末書の提出によって「一件落着」としておくことによって、「一事不再理」原則を獲得しておくのも知恵でしょう。
  2. 労働者の過失により事故を起こした場合であっても、損害賠償金額はかなり減額される判決となっています。使用者側には保険加入等の備えによって危険分散することを求めていますし、労働者の生活が破綻するまでの賠償責任を回避しています。
  3. なお、損害賠償請求を拒否したとしても、賃金から相殺することはできません。会社がどうしても賠償責任を問うのであれば裁判を起こす以外に手段はありません。
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