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労働条件は就業規則で自由に変更できるの?

Q

労働条件は就業規則で自由に変更できるの?

企業規模150人程度の会社で正社員として働いている。労働組合は無い。
会社が新年度から賃金制度を変更し、給料が平均して10%低下した。総務に確認したら「労働者代表に確認し就業規則を変更したので問題ない。」と言われた。
実際誰が労働者代表かわからないのだが、就業規則が変更されれば労働条件は自由に変更できるのか?なお就業規則は職場で自由に閲覧することはできている。

A

法的ポイント

労働条件の変更に関して、労働契約法が平成19年末に制定・明文化されてわかりやすくなった。
労働条件の不利益変更が認められるのは、次の場合である。

  1. 労働契約法第3条(労働契約の原則)「労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。」
  2. 第8条(労働契約の内容の変更)「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
  3. 第9条(就業規則による労働契約の内容の変更)「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則の変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
  4. 第10条 ……長文のため、要旨のみ…… 変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、不利益の程度の相当性、変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況など(手続きの)が合理的なものであるときは、変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

労働条件の不利益変更を個々の労働者の同意を取り付けることなくできるのは、就業規則変更以外にはありえない。
就業規則変更は、一方的にできるものではなく、1.変更内容の周知・説明、2.不利益のレベルが相当であるか(代替措置はあるか)、3.変更の必要性の相当性、4.労働組合との十分な協議、組合がなければ選挙で選出された従業員代表者との協議、これらの相当性と手続きなどの合理性が問われることになる。
就業規則変更、労働組合との協議合意で「55歳以上の賃金切下げ、退職金も引下げ連動、削減した原資を若手社員の賃上げに回した」ことは不当として争われた「みちのく銀行事件:最高裁H12.9.7第1小法廷判決」は、「不利益変更の合理性を肯定した高裁判決は是認できない」として、就業規則変更による労働条件変更を認めませんでした。
労働契約法第10条は、「秋北バス事件:昭和43年12月25日大法廷判決」で示された判例法理が明文化されたもので、みちのく銀行事件もこの判例法理にそって判示されています。

アドバイス

第10条にそって検討してみよう。

  1. 変更内容の周知・説明
    相談のケースでは、変更前の就業規則は周知されていましたが、就業規則を備え付けていない、見たこともない場合は、手続きの合理性以前の問題といえる。
    就業規則には、「『賃金額表』『給与表』『退職金』は、別途定める」となっている会社が多い。就業規則本文の他、これらも当然就業規則の一部を構成しているものであり、同様に周知されなければならない。
    「総務に確認したら……」ということから、変更内容の周知・説明はほとんどなされていないことから、相当性はない。
  2. 不利益のレベルが相当であるか(代替措置はあるか)
    給料が平均して10%低下したということだが、月額100万円の人が90万円になったことと、15万円の人が最低賃金に近い水準に低下した場合と相当性を同じように考えることはできない。従って、10%低下だけでは判断ができず、代替措置があるかなども勘案しながら個別の判断となる。
    みちのく銀行事件では、「定年の延長」など代替措置も取られなかったことも指摘されている。
  3. 変更の必要性の相当性
    「経営状態が悪化」などを会社は主張すると思われるが、一時的な赤字状態を相当性ありと認めることはできない。役員の報酬、株式配当、内部留保等々が問われる。
  4. 労働組合との十分な協議、組合がなければ選挙で選出された従業員代表者との協議
    従業員代表者は、民主的な選挙で選出されなければ、代表として不適格であり、誰が従業員代表か知らされていないことも手続き不備となる。
    従業員代表が従業員の意見を聞く場も作らず、代表としての権限を行使した場合も、手続きの不備は免れないだろう。会社側は、従業員の意見が集約できるよう場所や時間の提供など、積極的に協力することがあってもいいだろう。

本件のケースは明らかに違法な変更であり、無効である。
労働組合を結成して会社に対抗するか、従業員連名で異議があること、元に戻すことを直ちに行う必要がある。
労働基準監督署は、労働契約法に照らしての是正指導はおそらくしないであろう。会社が強行した時には、異議を主張する者が少数であっても、第10条に違反する状態であれば、労働審判申立なども方策の一つになる。

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