契約社員の配置換
Q
契約社員の配置換
3年契約で浜松営業所に勤務し、通算5年を超した。2回目契約期間の残り6ヶ月となる4月1日から静岡営業所に配置換すると内示された。雇用契約書には「更新の有無」について、「有り」となっていたが、3年目となる10月1日以降の契約については、具体的な話はない。
入社の時に、勤務地が変わるという話は聞いていなかったが、就業規則には、「契約社員も配置転換がある」とする旨の記述がある。
新幹線通勤を認めるというが通勤時間が往復で2時間位長くなるため行きたくない。なぜ、自分が対象なのか理由もはっきりしないが、所長と少し前に仕事のやり方を巡ってお互いに感情的になったことはある。浜松営業所は人員減になるが存続する。
拒否できないか。拒否した場合、次の更新をしないと言われると思う。解雇権濫用で争えないか。
A
法的ポイント
- 労働契約法7条(労働契約の成立)
- 「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。……」
- 労働契約法8条(労働契約の内容の変更)
- 「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」
- 労働基準法15条(労働条件の明示)
- 「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。……」
- 民法90条(公序良俗)
- 「公の秩序又は、善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」
- 労働契約法16条(解雇)
- 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」
最高裁判例:S61.7.14東亜ペイント事件 - 労働契約法18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
- 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。-以下、省略-
アドバイス
有期雇用の契約社員であっても、勤務地限定の契約になっていない、就業規則に配置換が明記されている場合は、配置換を拒否できる可能性はかなり低くなります。
家族に介護を必要とする者がいたり、家庭生活が崩壊するようなかなり強い個別事情がなければ、裁判でも配転拒否は認められていません。
配置換の拒否に対して、次の契約更新はしないと「雇用止め」されても、勤続6年弱、更新手続きの不備もない状態では、「解雇権濫用法理の類推適用」を主張することが難しい場合もありますが、3年の有期雇用契約の場合は、2回目の更新を経た時点で、「期間の定めの無い無期契約への転換権」の効力が発生しますので、労働者自らが無期契約への転換の申し込みをすることで、雇止めが避けられます。
配置換無効を争える余地があるとすれば、「差別的な扱い」「配置換が恣意的な退職の強要である」ことが立証できる場合ですが、相談の内容からはそれを汲み取ることができません。