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県内だけのつもりが、いきなり全国転勤

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県内だけのつもりが、いきなり全国転勤

正社員として自動車販売会社に勤務している。業務内容は自動車のセールス。勤続は15年目を迎える。
私が入社した時には、本社・営業所ともに県内にしかなかったので、私も含め営業社員は、県内の転勤は何度か経験をしている。
昨年、全国規模の企業と合併することになり、社内ではもっぱら全国的な人事異動があるのではないか? との話でもちきりである。
そんな中、上司より「来年度の定期異動で、君が全国転勤のリストに入っている」と言われた。どこへ転勤かの内示はまだない。
実家で老親を扶養しており、単身赴任は難しいため、県内にしか事業所のないこの企業を選んだので、今後の家庭生活が不安である。事情を上司に相談したが理解してもらえない。また、若手の社員がいる中で「なぜ自分が全国転勤か?」との疑問もある。
この転勤は受けなければならないのか?

A

法的ポイント

転勤先が遠距離の場合、家族と離れて単身生活を送ったり、住み慣れた地域社会や人間関係の距離をおかざるを得なくなるなど、労働者にとって大きな負担になる場合があります。しかし、全国展開をしている企業で支店や工場が全国各地にあったり、国際的取引で国外に支店や工場がある企業も多く存在している現状からすると、会社が従業員の転勤を人事権として命ずる場合があります。
まず、転勤は主要な労働条件にあたるわけですから転勤を命ずるための根拠として、労働契約や就業規則での「転勤を命ずることがある」等の定めをすることが必要となり、労働契約や就業規則上の定めがない場合は、転勤の対象となる労働者の個別同意が必要となります。
労働契約や就業規則上の定めがある場合には、会社はこれを根拠として配転を命ずることが出来、原則として従業員個別の同意を得る必要はありません。もし従業員がこれを拒否した場合は業務命令違反として、懲戒処分の対象になる場合があるでしょう。
しかし、労働契約や就業規則の定めがある場合でも転勤が社員に著しい不利益を与える場合には、転勤命令は権利の濫用となって無効となり、これを拒否したからといって、その事のみを以て解雇することはできません。
一方、判例をみると、71歳の母親が大阪を離れがたいとか妻が保母として勤務しているなど事情は、通常、甘受すべき程度とされた「東亜ペイント事件」や、大阪支店縮小にともなって東京支店に転勤を命じた事案で、裁判申立の9人のうち8人が女性で、そのうち4人が既婚女性で学齢期の子供がおり、独身女性も老親や病弱な両親を扶養しているという事情があったにも関わらず、いずれも転勤によって被る不利益は通常予想される範囲にとどまるとされチェース・マンハッタン銀行事件など、配転を争った判例が数おおくありますが、【解説】の最初で触れたような世情もあって、最近の動向としてはよほど特殊な事情でもないかぎり転勤を拒否する理由にはならないと言えます。
また、判例では、転勤に際して単身赴任手当や帰郷旅費の支給、社宅の提供などをして社員の不利益を軽減したり回避する何らかの措置をした場合、不利益の程度を判断するひとつの要素として考慮されてきました。チェース・マンハッタン事件では会社の経費援助が権利濫用の判断で考慮されたり、会社が婚約者の就職斡旋や社宅の提供に配慮していることによって、生活上の不利益の相当部分が解消されたと判断された川崎重工事件、会社が勤務時間や保育問題及び転居問題について充分話し合い、できる限りの配慮をしたいと考えていたことが考慮されたケンウッド事件などがあります。

【関係する法律や判例】

<法律>

  • 労働基準法第9章 「就業規則」
    • 第89条(作成及び届出の義務)
    • 第90条(作成の手続き)
    • 第91条(制裁規定の制限)
    • 第92条(法令及び労働協約との関係)
    • 第93条(労働契約との関係)
  • 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(略称:育児介護休業法)
    • 第26条(労働者の配置に関する配慮)
  • 労働契約法 第5条5項(労働契約の原則)
    • 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

<判例>

  • 東亜ペイント事件(昭和61年7月14日 最高裁判決)
  • チェース・マンハッタン銀行事件(平成3年4月12日 大阪地裁判決)
  • 帝国臓器製薬事件(平成1年9月7日 最高裁判決)
  • 川崎重工業事件(平成4年101月20日 最高裁判決)
  • ケンウッド事件(平成12年1月28日 最高裁判決)

アドバイス

相談者の勤める会社は県内の転勤はもともとあったようですので、おそらく、就業規則に転勤などの定めはあるものと思われます。そうであるなら、全国規模の企業との合併により全国的な人事異動の対象になったとすれば、配転そのものを拒否するのは難しいと言わざるを得ません。ただ、相談者には実家で老親を扶養しているとのことなので、このことが配転を断ることの「特殊な事情」にあたるかということになりますが、判例から言うと昨今の傾向から難しいように思われます。
それでは全国的な配転命令がされた時に黙って従うしかないのかということになりますが、転勤そのものの拒否はできなくとも、資本の異動によって人材活用が大きく変わり、県内に限られた配転から全国的な配転が考えられるわけですから、もし、勤務先に労働組合があれば、全国転勤が従業員の不利益にならないような転勤に係る各種手当の整備など、就業規則の見直しなどについて会社に求めることが必要でしょう。
具体的には、仕事と家庭の両立が保てる程度の帰郷回数とその旅費や転勤先の住居費の支給などの措置を講じさせなくてはなりませんし、もし対象者が配転に応じられない場合に、労働者の事情説明の機会や労使委員会のような機関を設ける事を求めても良いでしょう。
いずれにしてもこれらは労使(労働組合がなくても従業員代表と会社代表)で事前に検討すべきことでしょう。

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