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採用内々定取消は許されるのか?

Q

採用内々定取消は許されるのか?

私は、3月にA大学の卒業予定であったとき、前の年にY社の会社説明会に参加して、適性検査、面接試験を行い、最終面接を受け、同年5月末に「内々定通知」を受け、一緒に送付されていた入社承諾書に記名押印をして返送しました。この内々定通知書には、同年の10月に内定通知書授与が予定されていること、その際、労働条件通知書で具体的な労働条件を通知されること、卒業見込み証明書や健康診断書等を提出させることの記載がされていました。
この内々定通知書を受けて、Y社に入社承諾書等の返送をし、他の企業への就職活動を中止しました。
ところが、Y社は9月29日内々定通知書を取り消すという連絡を電話で受けました。理由は「経営環境の急激な悪化により、中期事業計画を見直すこととし、その一環として同年度は新卒者を採用しないことを決定した」というものでした。
就職活動をすべて中止し、採用される予定であった企業へ就職できるとの思いで夢あふれていましたが、現在は就職浪人中です。こんな事が許されるのでしょうか?

A

法的ポイント

【採用内定と採用内々定の法的性格】

採用内定の法的性格は、採用内定により解約権留保・就労始期付労働契約が成立しているという見解が現在ではほぼ支配的になっており、裁判例としては大日本印刷事件判決がその代表的なものといえます。
判例では、「会社からの募集(申し込みの誘引)に対し、労働者が応募したのは労働契約の申込みであり、これに対する会社からの採用内定通知は申込みの承諾であって、労働者の誓約書の提出とあいまって、これにより労働者と会社の間に『就労を開始する時期を大学卒業直後』とし、『それまでの間に誓約書記載の採用内定取り消し事由が発生した場合には使用者が解約権を行使することができる』労働契約が成立したと認めるのが相当である」と述べています。
これに対して採用内定に先だって企業が採用を望む学生に採用内々定であることを伝え、後日、正式に書面で採用内定を通知するという場合がありますが、このような「内々定」の場合は、労働契約の成立以前の段階であって、これを取消したとしても違法とまでは言えないと解されています。
採用内々定の取消しに関する裁判例は、平成23年6月に福岡地裁(二審判決)で下された「採用内々定の取消し事件」があります。この事件は、不動産会社が採用内定通知交付日の2日前に具体的な説明もなく突然内々定を取消したもので、判決では、内々定による労働契約の成立は認めないとされましたが、労働契約を締結する過程における信義則に反し、採用予定者の期待権を侵害するものとして不法行為を構成するとし、22万円の損害賠償の支払いを命じました。

【関係法令や判例等】

判例

  • 大日本印刷事件(最高裁判決、昭和54年7月20日)
  • 採用内々定取消事件(福岡地裁判決、平成23年2月)
  • B金融公庫事件(東京地裁判決、平成15年6月20日)
  • 新日本製鐵事件(東京高裁判決、平成16年1月22日)

法令等

<ポイント1「どの時点で労働契約が成立したか」>

新規学卒者の採用手続きは、(1)労働者の募集、(2)学生の応募、(3)採用試験の実施と合格決定、(4)採用内定通知書の送付と学生からの誓約書の提出、(一般的にこの時点で労働契約が成立していたと解される)(5)健康診断の実施、(6)入社式・辞令交付式、という順序をとることが一般的ですが、会社によっては違う過程をたどる場合もあります。
問題は、個々のケースにおいて(解約権留保・就労始期付)労働契約がどの時点で成立しているかということになります。しかし、(上記の(1)~(4)の課程を得た場合には)採用内々定であってもケース(当該の学生の拘束の度合い等)によっては労働契約が成立していると見られる場合もあります。逆に採用内定であっても労働契約が成立しているとは言えないとするケースも例外的にあります。

<ポイント2「使用者の解約権の行使が妥当だと認められる場合」>

採用内定通知と学生からの誓約書の提出によって解約権留保・就労始期付労働契約が成立しているとして、使用者の解約権の行使が認められる採用内定取り消し事由とはどんなものでしょうか。
この点について上述の大日本印刷事件最高裁判決では、『採用内定当時知ることができず、また、知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と是認することができるものに限られる』としました。
取消しが正当と認められる事由としは、通常、次のようなものが考えられるといえます。

  1. 学校を卒業できなかった場合。
  2. 入社の際に必要と定められた免許・資格が取得できなかった場合。
  3. 健康を著しく害し、勤務ができない場合。
  4. 履歴書や誓約書等に虚偽の記載があり、その内容や程度が採否判断にとって重大なものである場合。
  5. 採用に差し支えるような破廉恥な犯罪を犯した場合。

<内定通知後に労働者側から辞退できるか>

この場合、会社は債務不履行によって現実に発生した一定の損害賠償を労働者に請求することは可能といえますが、発生した損害額の証明は難しい場合も多く、仮に損害額が証明できたとしても過失の程度や会社と労働者の負担のバランスなどが考慮され、全額を労働者に科すことが認められる訳ではありません。また、内定辞退に対して会社が予め違約金や損害賠償額を定めることも労働基準法第16条で禁止されています。
とは言えども、双方が合意して成立した労働契約ですから、双方に信義則に基づいた誠実な対応が求められますので、内定辞退をする場合には会社に対して充分な説明や誠実な態度を尽くして理解を得ることが大切でしょう。

アドバイス

相談のケースは内々定通知の取り消しで、入社承諾書に記名押印はしているものの労働条件通知書もこの時点では発行されていません。誓約書の提出がどうであったかの記載はありませんが、一般的には雇用契約が成立したと見るのは難しいかもしれません。
しかし、内々定の取り消しが内定通知が予定されていた直前で、しかも電話で一方的に連絡するというY社のやり方は信義則に反し、採用予定者の期待権を侵害する行為として不法行為を構成するというべきでしょう。Y社に内々定取消しに至った充分な説明を求めるとともに、内々定取消しの撤回をまずは求め、どうしてもかなわない場合は、内々定通知後に他の企業への就職活動を中止していたという事実からして内定の成立を期待した求職者を裏切った「契約締結上の過失」あるいは「契約準備段階の過失」として損害賠償(慰謝料)請求をすることも可能です。
なお、仮に雇用契約が成立していたとしたら、取り消しは「解雇」であり、労働契約法第16条によってその正当性が問われることになります。また、Y社の取消し理由が経営環境の急激な悪化による新卒者の採用の停止であることからすると、解雇(取消し)は整理解雇というべきで、この場合は「整理解雇の四要件」を満しているかが問われることになります。
いずれにしても会社に対して内々定取消しの撤回を求めて争うか、不当解雇を前提としながらも金銭(賃金債権や解雇予告手当、慰謝料などの損害賠償)解決をはかるかの方針を定めて、労働委員会や労働審判、裁判などの方法をとるべきでしょう。

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