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30年勤めたが退職金はもらえないのか

Q

30年勤めたが退職金はもらえないのか

30年勤めた正社員。退職金をもらいたいが、何の話もない。どうしたらいいか。

A

法的ポイント

退職金は、法令で決められた制度ではありません。
使用者が決める制度ですから、退職金にかかわる規定(一般的には就業規則)の有無によって、請求権や支払い義務が決まります。

労働基準法9章(就業規則)
89条(作成及び届出の義務)
「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次ぎに掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁(労働基準監督署)に届け出なければならない。次ぎに掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。」
89条一
「始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、……」
89条二
「賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締め切り日及び支払いの時期並びに昇給に関する事項。」
89条三
「退職に関する事項(解雇の事由を含む)。」
89条三の二
「退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに支払いの時期に関する事項」
106条(法令等の周知義務)
「……就業規則を常時各作業上の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。」
民法92条(任意規定と異なる慣習)
「法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。」

規定として明確になっていないが、職場の慣習によって請求権が発生する場合があります。慣習法(判例法)と呼ばれるものです。

アドバイス

退職金は、勤務先に規定がない場合は、支払義務はありません。就業規則や別途定めるものに記載されていれば、使用者は支払義務があります。残念ながら、悪質な場合、当初定められていた退職金規定を従業員の知らぬ間に勝手に改訂してしまう経営者も皆無と言い切れないので、留意する必要があります。
就業規則には書いてないが、今までの退職者が、退職の際、何らかの金銭を受け取っていた場合には「定着した支給慣行」として請求できる可能性は出てきます。同僚や、先輩に聞いて可能性を追求してみることになります。「中小企業退職金共済制度」等の加入も調べることが大事です。
就業規則を見せてくれない、見たことがないとよく聞きます。就業規則の周知義務を怠った使用者は、「30万円以下の罰金」になる可能性もあります。見せないのは犯罪です。自信を持って見せるよう請求してください。
なお、「定着した支給慣行」を会社が認めない時には、裁判所など第3者機関を活用した争いになりますが、その場合、立証義務は労働者側になります。
上述した裏付けが何もない場合に、「駄目元」覚悟で、「退職金をほしい」と求めることは何ら問題ではありません。

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